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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》中国「対日スパイ活動」

その手口と「警察拠点」の実態

2023年5月号

 スパイはフィクションでも、冷戦期の昔話でもない。国家機密でなくとも民間の機微情報や先端技術を盗むことで、国家間競争では経済面でも軍事面でも優位に立てる時代となり、スパイ活動はより巧妙かつ積極的になっている。各国の警戒対象が冷戦期のソ連から中国に代わって久しく、その実態も徐々に明らかになる中で、日本ばかりが現実に向き合わず、対策は遅々として進んでいない。
 中国のスパイ活動の新たな手口を示したのは、スペインを拠点とするNGO(非政府機関)「セーフガード・ディフェンダーズ」が二〇二二年九月に公表した「海外一一〇番」という報告書だ。
 中国が海外に勝手に警察の出先機関を設置し、中国の法律に基づき自国民を取り締まったり、スパイ工作を行ったりしているとした内容で、中国の「海外警察」が日本や欧米諸国など少なくとも五十三カ国百二カ所にあると指摘している。
 他国で警察活動を行うことは主権侵害にあたる。四月十七日、米司法当局は、ニューヨークにある中国の「警察署」を摘発し、中国系米国人二人を逮捕した。こうした中国の海外警察署は各国に広がり、二〇二一年四月から二二年七月の間・・・

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