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社会・文化

侮るなかれ「コロナ後遺症」

一段と深刻な「社会問題」に

2023年6月号

 大相撲の正代と御嶽海、二人の大関が昨年、コロナに罹患した。復帰後、正代が七場所中四場所、御嶽海は四場所すべて負け越しで、共に大関から陥落した。両力士のコロナ罹患前一年間の負け越しは、それぞれ二場所、一場所だ。両力士とも、コロナ感染を契機に急に成績が悪化したが、この間、怪我などの体調不良はない。周辺からは、この不振についてコロナ感染の後遺症との声が漏れている。
 厚生労働省は五月八日、コロナ感染症の感染症法上の扱いを五類に変更したが対策は不十分だ。すでに社会問題化していると言っていいコロナ後遺症が、さらに深刻化する事態が懸念されている。
 コロナ後遺症(Long COVID)には世界的に確立した診断基準は存在しない。米国ではコロナ感染後四週間以上、英国なら十二週間以上、疲労感、ブレインフォグ(脳に靄がかかったような状態)、頭痛、記憶障害、不眠、動悸、息切れなどの症状が続くものを指す。生活や仕事への影響は大きい。
 昨年八月、オランダの研究チームが、英『ランセット』誌に発表した研究によれば、コロナ後遺症の発症率は一二・七%だ。この研究は二〇二〇年三月から二一・・・

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