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連載

金融の世紀

第7回【巨額の国債販売と北軍の勝利】
黒木 亮

2023年7月号

 南北戦争開始から一年半後の一八六二年十月、戦費調達用の国債を販売するにあたり、ジェイ・クック商会は合衆国(北軍)全土に四、五千人からなる販売体制を構築した。これを可能にしたのが、鉄道網と電報網の発達だった。
 東部では数多くの個人銀行(パートナー制など、個人所有の銀行)が販売代理人として参加したが、金融機関が未発達だった西部では、若い人々が移動販売員(travelling agent)として巡回した。
 クックは、新聞広告を出す際には、広告料を多めに支払い、広告とは別に、北軍の勝利のために、国債を買うべきだという記事を書かせるよう仕向け、元々北軍に勝ってほしい新聞も抵抗なく従った。
 広告では、販売に成功したペンシルヴェニア州債のときと同じように、愛国心に訴える情熱的なもののほか、国債のことを知らない一般大衆を教育するためのものも考案した。たとえば、手持ちの二、三千ドルを投資したいと考えている地方の農民が手紙で「国債はどこで買えるのでしょうか?」「金利は期日どおり支払ってもらえるのでしょうか?」「税金はどうなるのでしょうか?」といった質問をし、それにジェ・・・

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