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連載

日本の科学アラカルト 156

二酸化炭素を資源に変換 触媒技術が秘める可能性

2023年8月号

 カーボン・ニュートラル―。二〇五〇年を目処に、排出する二酸化炭素を実質ゼロにするハードルは、決して低くはない。科学的な「ブレイクスルー」がいくつも必要になるだろう。
「実質ゼロ」ということは、「排出量ゼロ」を意味しないことは当然だが、その方法はいくつか考えられる。焦点のひとつである排出権取引は、二酸化炭素を排出する権利を購入することで、一定の「枠」の二酸化炭素排出を、帳簿上でプラスマイナスゼロにする。
 また一度は排出した二酸化炭素を、大気中に放出する前に捕捉してしまう方法も考えられる。捕まえた二酸化炭素を地中に溜めてしまい、大気中に排出する量をゼロにできる。
 一方、捕捉した二酸化炭素を別の物質を作るための「原料」にするアプローチもある。
「サバティエ反応」とは、二酸化炭素と水素から、メタンと水ができる反応だ。メタンはいわゆる「13A」と呼ばれる都市ガスの成分の八割以上を占める物質である。では、二酸化炭素をすべてサバティエ反応でメタンにすれば、カーボン・ニュートラルが実現する上、エネルギーが手に入る―、と考えるのは早計だ。
 二酸化・・・

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