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連載

新大学評判記 第44話

豊田工業大学 「トヨタありき」の教育・研究機関

2023年8月号

 豊田工業大学の知名度は高くはないが、名前を聞けば人は「無名の三流私立大」と軽んじることはないだろう。「トヨタ」の響きは否応なく、豊富な資金力と経済界における影響力を想像させるからだ。トヨタ自動車の創業者、豊田喜一郎の「社業繁栄の暁には大学設立を」という想いと世界的自動車メーカーとしてのトヨタの社会貢献策として、一九八一年に設立された豊田工業大学は今、電気自動車(EV)、自動運転など車のパラダイム転換が進む中、トヨタの研究開発を支える人材供給プールとしての役割を強めている。
 豊田工業大学は工学部先端工学基礎学科のみの一学部一学科の単科大学で、入学定員百人、四学年合わせた在校生は四百二十四人(二〇二三年五月現在)のみ。大学院の修士、博士後期課程の百人強を含めても、五百人をやっと上回る規模だ。女子大など学生数二千人以下の小規模大学が淘汰の波にさらされる中で、並の大学なら消え去る日も遠くないだろう。だが、トヨタの強力な支援によって、全国の私大の中で、トップクラスの良質な教育環境を創り出し、異彩を放っている。

人材囲い込みの手段・・・

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