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社会・文化

大麻はそんなに悪いのか

いまだ「厳罰」の珍しい国

2023年9月号

 東京農業大学ボクシング部や日本大学アメリカンフットボール部の部員らが大麻所持で相次ぎ逮捕された。一部の選手は名前や顔写真がインターネットで晒され、若者への大麻浸透が治安を脅かす一大事かのような報道がされている。ただ、海外では「大麻=危険なドラッグ」というかつての見方は大きく変化している。医療分野での活用や経済効果などに着目し、合法化・非犯罪化する国も増えている。「治安大国」を自負する日本は、こうした世界の流れや時代の変化に取り残されてはいないか。
 大麻と人類の歴史は紀元前にさかのぼる。ロープや衣服、食料などとして使われていた植物はやがて、向精神作用を持つことが分かり、癒やしや宗教儀式に用いられるようになった。
 大麻には四百種類以上の化合物が含まれる。THC(テトラヒドロカンナビノール)はいわゆる「ハイ」になり、多幸感をもたらす効能がある。CBD(カンナビジオール)は幻覚作用を有さず、鎮静効果やリラックス効果があるとされ、医療分野で注目される。
 数々の研究で、大麻には痛みの軽減や発作の抑制、食欲の刺激効果があると報告されている。世界保健機関(WHO)・・・

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