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社会・文化

肥満治療「新時代」の幕開け

生活習慣病予防で「切り札」登場

2023年9月号

 肥満は先進国が抱える重大な問題だ。数多くのダイエット商品が販売され、メディアにも関連のニュースが溢れ返っている。世界では製薬会社が肥満症治療薬の開発にしのぎを削る。糖尿病治療薬が肥満症、そして心疾患などにも効果があることが明らかになった。さらに、より効果の高い肥満症新薬が登場した。従来の生活習慣病対策が大きく変わる可能性がある。ただ、安全性については不明な点もあり検証が求められている。

心臓病も防ぐ新薬

 近年の大きな動きは、GLP-1受容体作動薬の「適応拡大」だ。GLP-1は食後に小腸から分泌されるホルモンである。血流にのって膵臓に運ばれ、インスリン分泌を促し、血糖値を下げる。当初、この薬は糖尿病治療薬として開発されたが、その後の臨床試験で体重減少の効果が確認された。現在、このような作用機序を有する多くの薬剤が開発中である。
 特筆すべきは、八月八日にデンマークの製薬企業ノボノルディスク社が発表した「SELECT」という臨床試験の中間解析結果である。心疾患を持つが糖尿病はない四十五歳以上の肥満成・・・

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