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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》絶望の「オンライン診療」

日本は医療も「後進国化」

2023年9月号

 一度壊れたものは二度と元通りにならない。そう考えれば、「復旧」ではなく、より強いものを作る「復興」を目指す。無理やり「復旧」を図れば、ひずみばかりが大きくなる。新型コロナウイルスのパンデミックを機に世界各国で既存の医療システムの変革が進み、オンライン診療が定着、発展するのと対照的に、日本では感染拡大が峠を越えると、既得権を守ろうとする医療界と官僚による歪んだ「復旧」作業が始まっている。
 日本でオンライン診療に保険が適用されるようになったのは二〇一八年度である。その時点での対象はかかりつけの患者などに限られ、診療内容も高血圧や糖尿病など慢性疾患の定期処方などに制限されていた。そうした規制が一挙に緩和されたのは、日本各地で新型コロナの院内感染が発生し、医師が患者と対面で診療するリスクが高まってからだ。
 海外でも同じ理由で、オンライン診療が普及した。それは医師と患者の選択肢を増やしただけでなく、クラウドに保存される診療データを活用した新たな医療サービスの誕生も促進した。
 日本でも当初は、医療サービスの革新が予感された。厚生労働省は二〇年四月、オンライン診・・・

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