欧州連合（ＥＵ）の環境政策が後退を始めた。「反グリーン」を掲げる右派ポピュリスト政党の勢いに押されているためだ。気候変動に敏感な欧州で、ＥＵの政策は多くの支持を集めるはずだった。だがいまや、それはエリートの欺瞞として非難の的となる。来年六月の欧州議会選を前に、ＥＵが掲げてきた金看板のメッキがもろくもはがれ落ちている。
　ＥＵは、さまざまな環境政策を「欧州グリーンディール」と銘打ち進める。グリーンディールはフォンデアライエン欧州委員長が二〇一九年十二月の就任時に発表した目玉政策だ。五〇年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることなどを柱とする。ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機に際しても、ＥＵ執行部は「今こそ脱ロシアや再生可能エネルギーへの転換を進めるべきだ」として、政策推進に強気を貫いていた。
　しかし、フォンデアライエン氏は九月十三日にフランス・ストラスブールで行った一般教書演説で、そうした姿勢を変節させた。
　演説ではグリーンディールに対する「比類なき野心」を強調したものの、内容は具体性に乏しく、新たな取り組みにはほとんど触れなかった。そ・・・