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経済

トヨタ「工場操業停止」が示す危機

露呈した「デジタル後進企業」の急所

2023年10月号

 約一カ月前に起きた「大事件」は、すっかり忘れ去られつつある。トヨタ自動車の国内十二の工場で操業がストップしたのは八月二十九日の朝。操業停止は最終的にトヨタの全十四工場のほか、ダイハツ工業や日野自動車の一部工場に拡大し、復旧したのは翌三十日だった。舞台裏でトヨタはドタバタの対応に終始し、信じられないような原因が露呈し笑いものになった。そんな中、デジタル・IT技術の脆弱性がトヨタのアキレス腱としてクローズアップされている。
 トヨタは冒頭の事件発生から一週間以上、ろくに説明もしなかったが、九月六日の午前中、突如として操業停止の原因を公表した。内容については後述するが、この日は「歴代初のSUV型」として大きく報道された高級車、新型センチュリーの発表会があった。「マスコミの関心が新型車に向くこの日にあえて原因発表をぶつけた」(業界紙記者)という。発表会場で囲み取材に応じていた中嶋裕樹副社長は、新型車については饒舌だったが、システム障害の質問が出ると「今日はセンチュリーについて」と遮って逃げたという。

次世代OS開発に遅れ{br・・・

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