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社会・文化

今冬「トリプルデミック」が襲来

高齢者「肺炎死」回避の方策

2023年11月号

「今冬、我が国は呼吸器感染症が未曾有の大流行をするかもしれない」。高橋謙造医師(帝京大学大学院教授・公衆衛生学)は警告する。懸念するのは新型コロナウイルス(コロナ)、インフルエンザ(インフル)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の三つが同時流行する「トリプルデミック」である。いずれも鼻から喉までの上気道に感染するウイルスで、高齢者では肺炎を起こすこともある。高橋医師は「ワクチン接種」と「普段通りの生活」の重要性を訴える。
 高齢者にとり、肺炎は命にかかわる疾患だ。コロナ流行前の二〇一九年、我が国では九万五千四百九十八人が肺炎で死亡した。死亡数全体の六・九%を占め、がん、心疾患、老衰、脳血管疾患に次いで五番目に多い。このうち、少なからぬ高齢者がウイルス性肺炎で亡くなっている。
 厚生労働省の人口動態統計によれば、一九年には三千五百七十一人がインフルで亡くなっている。この数字は死亡診断書の記載に基づいたものだが、ウイルス性肺炎の診断は難しく、死者数は過小評価していると考えられている。
 RSVも同様だ。グラクソ・スミスクライン社の研究チームは、日本では六十歳以上の・・・

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