三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

《日本のサンクチュアリ》医療安全調査機構

医療事故が減らない諸悪の根源

2023年11月号

 人の健康と命を守り助ける仕事は、誰にでもできるわけではない。その仕事を望み、技能と使命感を認められた人間にも、ミスは起きる。だからこそ、ミスを最小化するサポート体制が重要になる。多発する医療事故の理由を、医師や看護師など医療従事者の不足だけと見るのでは不十分だ。事故原因を究明し、再発防止を図る組織が、利権本位の行動原理で腐敗していることを見逃してはならない。
 日本の医療事故の多さは、今年九〜十月に事故発生や訴訟が報じられた事例を見るだけでも想像がつく。宮崎県立延岡病院、神奈川県立こども医療センター、神戸徳洲会病院、新型コロナワクチン接種を行った愛知県愛西市……。事件として発覚したり裁判沙汰になったりしたのは、氷山の一角と見ていい。
 日本で医療事故のサポート体制を担うのは、「日本医療安全調査機構」(以下、機構)である。厚生労働省が指定した我が国唯一の医療事故に関する第三者調査機関で、目的は「医療事故についての情報の収集・検証・調査、研修、出版等の事業を通して、事故の防止のための適切な対応策の策定に役立つ知見を蓄積し、普及啓発することに・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます