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社会・文化

フォトジャーナリズムの終焉

スマホが駆逐した「時代の記録者」

2023年12月号

 十月七日に勃発したイスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模テロ攻撃。ハマスはイスラエルで一千二百人ほどの民間人を殺害し、イスラエル軍はハマスの拠点があるガザを報復攻撃して一万人以上を殺害している。
 こうした紛争や人道危機では、その現実を取材して世界に写真で伝える「フォトジャーナリズム」が不可欠だった。必ず現場に足を運んで撮影する必要があるフォトジャーナリズムの世界では、古くから戦場写真などで〝スター〟フォトグラファーが登場し、日本もかつては沢田教一や長尾靖、酒井淑夫といった世界的なフォトジャーナリストを輩出した。
 ところが、写真で歴史を切り取る役割を担ってきたフォトジャーナリズムは、もはや過去のものになってしまったようだ。特に、今回のイスラエルとガザの紛争は、その流れを決定的なものにしたと言える。

デジタル化が契機に

「十年ほど前から、フォトジャーナリズム業界は大きく変化し始め、もう今では死に体の状態だ」と語るのは、米AP通信の元写真エディターだ。「かつてのように、写真の力でニュ・・・

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