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米名門大学が病む「政治的正しさ」

「人種・宗教・思想」何でも平等の難題

2024年1月号

 米国の名門大学がまたも、政治介入で揺れている。
 ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)などトップ校は今、「ガザ紛争にどう向き合うか」を問われている。
 正解は「イスラエルを徹底的に弁護する」ことだ。人種や宗教、経済的な平等の問題や国際紛争、政治参加の平等まで、その都度「政治的正しさ(ポリティカル・コレクトネス)」を問われる大学指導者たちにとっては、現代社会は地雷原ばかりである。
 ほんの一瞬の迷いが人生を狂わせる。全米の名門大学経営陣にとって、そんな瞬間が十二月、またしてもやってきた。舞台は米下院公聴会。学長たちに問われたのは、最大級の難問だった。
「ユダヤ人ジェノサイド(=大量殺戮)を求める人たちは、あなたの大学の綱領に背くのか否か、イエスかノーで答えなさい」
 これは厄介な話である。
 大学の綱領は通常、「思想信条の自由」「信教の自由」をうたっている。「ユダヤ人虐殺」は絶対悪であり、綱領に明記するまでもない。「イエスかノーか」と問われれば、「大学綱領にはないが、絶対悪だから、断固拒否する」と答えるしかない。・・・

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