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社会・文化

欧州音楽界で蘇る「近衛家」

秀麿の曾孫が室内楽の新星に

2024年1月号

 世界中の自治体が対人接触禁止令を布告したコロナ禍にあって、クラシック音楽界で最大の被害を被ったのが室内楽、とりわけコンクールを前にした若いグループだった。部屋に籠もり譜面と向き合えばすむソリストとは違い、コンマ数秒のズレが致命傷の合奏技術を競うのだ。腕利きが集まり、朝から晩まで顔を突き合わせ、数カ月から数年もの訓練を重ねることで、やっとプロの入口に辿り着くジャンルなのである。
 欧州各国、米、豪、亜大陸に各ひとつ程が存在するメジャー室内楽コンクールのなかで、二〇二一年六月に前年から延期となっていたイタリアの難関プレミオ・パオロ・ボルチアーニ国際弦楽四重奏コンクールがいち早く再開された。一部の参加予定団体が渡航不能、新作を委嘱された日本の細川俊夫はオンライン参加でフライング気味の決行だった大会で、最高位(一位なし二位)獲得はベルリン拠点の日本人、近衛麻由がヴィオラに加わる新鋭レオンコロ弦楽四重奏団だった。
 国際大会が本格的に再開し空前のラッシュとなった翌二〇二二年、全員二十代前半のこのグループは、四月のロンドン・ウィグモアホール国際弦楽四重奏コンクールと翌五月のボ・・・

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