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連載

金融の世紀

第14回【真の覇者・ケミカル銀行】
黒木 亮

2024年2月号

 902年、米司法省が、JPモルガンの影響下にあった鉄道持ち株会社、ノーザン・セキュリティーズ社を1890年に成立したシャーマン反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴した。
 それを知ったピアポント・モルガンは、ワシントンDCに出向き、ホワイトハウスでセオドア・ルーズベルト大統領とノックス司法長官に抗議した。
 しかし、提訴は取り下げられず、2年後の1904年3月、連邦最高裁が5対4の僅差で政府に軍配を上げた。ノーザン・セキュリティーズ社は解散を余儀なくされ、傘下の鉄道会社は再び別々の会社として経営されるようになった。
 米国ではその後の7年間で、44件のシャーマン反トラスト法違反の提訴がなされ、ほぼすべてで政府の主張が認められた。
 1911年には、国の石油精製能力の9割を誇っていたロックフェラーのスタンダード・オイル社が、連邦最高裁の命令で34の会社に分割された。同年、司法省は、USスティールも提訴した。
 トラスト叩きは激しさを増し、共和党のウィリアム・H・タフト大統領時代の1912年、下院の銀行・通貨委員会に、金融業界におけるトラ・・・

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