三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

《日本のサンクチュアリ》日本赤十字社

能登地震で晒した「組織の腐敗」

2024年2月号

 掲げる理念が崇高で歴史的な実績のある組織ゆえ、現実の振る舞いに多少の問題があっても批判を受けにくい。それをいいことに理想の追求から遠い運営を続ければ、人心も離れる。「苦しみの中にいる者は敵味方なく救う」とした赤十字創設者のアンリ・デュナンの理想を追求し、世界の赤十字・赤新月社網の一角で災害救護などに携わる日本赤十字社(日赤)が、厚生労働省からの天下りを通じた利権団体と化していることだ。
 日赤の前身の博愛社は、1877年(明治10年)の西南戦争の負傷者支援のために設立された。88年には磐梯山噴火の被災者、90年にはオスマントルコ帝国の軍艦エルトゥールル号の遭難者を救護して、国際的にも高い評価を受けた。その後も1923年(大正12年)の関東大震災から今年元日に発生した能登半島地震まで、被災地にはいつも日赤職員の姿がある。
 日赤が常備し、研修と訓練を欠かさない「医療救護班」は、医師1人、看護師3人、運転手1人、事務管理1人の計6人で構成され、全国に487班、5231人を擁する。独自開発の「dERU」という仮設診療所のシステムを持ち、エアーテント、医療資機材、医薬品、・・・