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ナワリヌイ「抹殺」の真因

プーチンの焦りと「粛清の嵐」

2024年3月号

 ロシアのウラジーミル・プーチン政権による「反体制派」や「裏切り者」の粛清が激しさを増している。プーチンの最大の政敵だったアレクセイ・ナワリヌイが獄死し、その後も不審死が相次いでいる。一段の引き締めに今動くのはなぜか。
 ナワリヌイの死亡が発表された3日後、連邦刑執行庁(FSIN)のある局次長が上級大将への異例の昇進を果たした。ロシアの独立系紙『ノーバヤ・ガゼータ』によれば、こうした案件の手続きには通常、数週間から数カ月かかるが、プーチンがすぐに大統領令に署名していた。
 過去にも似たようなことがあった。プーチンを批判し、亡命先のイギリスで放射性物質「ポロニウム210」を盛られて暗殺されたロシア連邦保安庁(FSB)元職員、アレクサンドル・リトビネンコの2006年の事件では、容疑者が後にプーチンから勲章を授かった。一五年の野党指導者ボリス・ネムツォフの暗殺への関与が疑われたチェチェン共和国の首長ラムザン・カディロフも事件直後に勲章を受けている。
 プーチン政権はこうした大物の暗殺事件との関わりを否認しつつも、時に派手な毒物を使用したり、実行犯に勲章を与えたり・・・