三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

習近平側近「三派」の権力闘争

文化大革命前夜と似た様相

2024年3月号

 中国の習近平国家主席の足元は一枚岩ではない。首相の李強氏と中央弁公庁主任の蔡奇氏の二大勢力がしのぎを削る。ここにきて、習氏の彭麗媛夫人に近いといわれる「夫人派」がにわかに台頭し、党内での「三大勢力」が完成しつつある。
 旧正月、春節の連休に入る直前の2月7日、中国政府は証券業を監督する中国証券監督管理委員会のトップである主席を交代させる人事を発表した。銀行出身の易会満氏が退任し、上海市共産党委員会副書記だった呉清氏が任命された。中南海界隈では「李強首相派が重要ポストを取った」と指摘する人が多い。
 2022年秋に開かれた党大会で、習近平氏が率いるグループが、長年のライバル、江沢民派(上海閥)と、胡錦濤派(共青団派)を一掃し、党内の重要ポストをほぼ独占した。しかし、その前後から、李強氏と蔡奇氏による主導権争いが激しくなった。
 対立は昨年夏に顕著になった。共産党内の序列では、李氏はナンバー2で、蔡氏はナンバー5。しかし、蔡氏は最高指導部の政治局常務委員会のメンバーと政治局員のポストである中央弁公庁主任を兼務する。このポストは党中央の番頭役。総書記の習氏と共・・・