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社会・文化

災害派遣医療隊「抜本改革」が急務

被災地要望との「乖離」が鮮明に

2024年3月号

 能登半島地震での災害派遣医療チーム(DMAT)の活動が目立つ。一月二十九日時点で、一千二十八の部隊が派遣され、東日本大震災(三百八十三部隊)や熊本地震(四百六十六部隊)の派遣数を大幅に上回る。チームの医師ら一人一人は奮闘した。しかし被災地の医療ニーズに十分応えきれているかは疑問符が付く。その背景に厚生労働省を核にした「災害医療ムラ」ともいえる利権集団の存在がある。被災地に必要なDMATの活用を妨げているのだ。
 DMATは一九九五年の阪神・淡路大震災で救命活動の初動が遅れたことが問題視され、二〇〇五年に発足した制度だ。厚労省が深く関わり、事務局は国立病院機構が設置した東京の災害医療センターと大阪医療センターにある。国が作成した計画に基づき、都道府県が病院(DMAT指定医療機関)と契約。災害が発生すれば、このような病院から医師一人、看護師二人、業務調整員一人がチームを組んで被災地に災害発生後四十八時間以内を目標に駆けつける。
 発災後に生存が期待できる「黄金の七十二時間」。DMATは、その時間内にできるだけ多くの負傷者を救済しようという試みである。発災直後、地元の行・・・