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社会・文化

画期的「肥満治療薬」が使えない日本

厚労省の失態と医師の「新利権」

2024年3月号

 世界中で肥満症治療薬ウゴービが爆発的人気だ。開発したノボノルディスク社(ノボ社)の治験では、肥満症患者に週に一回皮下注射することで一二・五%減量することができた。二月二十二日から日本でも医療機関を受診して処方されるようになった。朗報だが、現状では多くの日本人はその恩恵に与れそうにない。処方条件が厳しいうえ、限られた病院でしか扱わないからだ。そこには厚生労働省の失態、製薬企業と医学界の利権が絡む、患者不在の実態がある。
 日本でウゴービが処方できるのは運動、食事療法で改善せず、高血圧、脂質異常症、糖尿病のいずれかがあり、ボディ・マス・インデックス(BMI)という肥満指数が三十五以上か、前出の合併症が二つ以上でBMI二十七以上となる。
 海外の基準は違う。米国の食品医薬品局(FDA)の場合、BMI二十七以上で二つ以上の合併症を有する場合という条件は日本と同じだが、合併症が一つの場合、BMI三十以上での使用を認めている。BMI三十以上は、身長百七十センチの場合、体重八十七キロ以上となる。三十五以上なら、百一キロ以上だ。その差は大きい。
 制限はこれだけではない・・・