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社会・文化

農業基本法改正案は「廃案」にせよ

議論拙速「食料安保」に逆効果

2024年4月号

 農業政策の理念を定める食料・農業・農村基本法の改正案の国会提出を目前に控えた今年1月17日、スイスのダボスで開かれていた世界経済フォーラム(WEF)では、日本の農業の根幹である水田稲作を揺るがしかねない議論が交わされていた。
「気候と健康」のセッションで、化学・製薬の多国籍企業でモンサントを傘下に持つバイエルのビル・アンダーソン最高経営責任者(CEO)が、「アジアのほとんどの地域では、いまだに田に水を張る伝統的な方法でコメが栽培されている(中略)コメの生産はメタンの排出源の一つであり、温室効果ガスの排出という点では二酸化炭素の何倍も有害だ」と提起した。
 農業部門のメタンの排出源は、畜産と水田が圧倒的に多い。WEFは2018年に白書「食肉の未来」を公表し、「温室効果ガスの総排出量のうち14.5%は畜産分野が排出しており、家畜の飼料を栽培するための土地は、森林破壊の最大の要因で生物多様性の損失を招いている」と批判した。稲作専門家は、「次の標的は水田か」という予感を共有していた。
 アンダーソンCEOは「私たちはそれ(コメ)を、必要な水が約四〇%減り、メタン・・・

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