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「フィリピン防衛」日米の難題

中国の海洋侵略をどう防ぐか

2024年4月号

 南シナ海で中国とフィリピンがにらみ合っている。領有権を争うアユンギン礁付近では、補給任務に就くフィリピン船舶に対し、中国海警局の船が衝突と高圧放水銃で繰り返し妨害。三月五日にはフィリピン側に初めての負傷者が発生した。フィリピンのマルコス大統領は二月末、豪州議会で演説し、中国の行為を「地域の平和を損ない、地域の安定を侵食し、地域の発展を脅かす」と決めつけた。
 これに対し、マニラの中国大使館は三月五日、アユンギン礁でのフィリピン船の行動を「不法侵入」「海洋挑発行為」と非難する声明を発表した。
 緊張が続く中、米国はフィリピンを取り込む動きを続けている。既に昨年二月、「米比防衛協力強化協定(EDCA)」に基づき、米軍がフィリピンで活動できる拠点を従来の五カ所から九カ所に増やすことを決めた。続く昨年五月の米比首脳会談では、陸海空にサイバー、宇宙も含めた全分野での情報共有や防衛強化をうたったガイドラインの策定で合意した。米比両国は現在、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の策定を急いでいる。昨年秋からは米軍とフィリピン軍、豪州軍による南シナ海での共同パトロールも始めた。{・・・

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