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台湾「金門島」を掠め取る中国

「現状変更」の危機に静観の米国

2024年4月号

 中国福建省沿岸で台湾が実効支配する離島、金門島付近の海域で二月十四日、台湾の海巡署(海上保安庁に相当)が追跡する中国漁船が転覆し二人が死亡した。中国当局はこれを機に、公船によるパトロールを常態化させた。いま民進党政権の関係者からは、金門の「尖閣諸島化」と「クリミア半島化」という危惧の声があがる。いずれも金門での支配権を台湾から奪う動きである。金門では中国を支持する住民が圧倒的に多い。台湾は難しい対応を迫られている。
 金門水域では中台関係が緩和した一九九〇年代、台湾側がトラブルを避けるために「禁止・制限水域」を設定した。「中国の船が許可なく進入してはいけない」としている。金門の事情に詳しい民進党幹部によれば、台湾にとって、禁止・制限水域は「領海」と同じ意味だ。中国を刺激したくないため、「領海」という言葉を使わなかった。
 中台双方は、この海域でトラブルを起こさないというのが、長年の暗黙の了解だったが、転覆事件を機に崩れてしまった。中国当局は、「禁止水域や制限水域はそもそも存在しない」と主張するようになった。

尖閣と同様の手口・・・

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