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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》サプリ健康食品の「魔窟」

被害はもっと広く深い

2024年5月号

 安全に徹すれば効率が悪く、自由度を高めればリスクが増える現象は、あらゆる分野に共通する。安全と非効率、リスクと自由を二律背反にしないため、なかんずく人の健康に関する商品開発では、包括的かつ不断の努力が欠かせない。その意味で、小林製薬が製造した紅麹原料を含む機能性表示食品の健康被害問題への政府の近視眼的な対応では、同じような悲劇を再び引き起こしかねない。
 今回の問題では、製造過程で混入した青カビが産生するプベルル酸による腎障害を原因とする分析がメディアに溢れ、断定的な印象を与えている。根拠は、体重1キロあたり50mg以上という大量のプベルル酸をマウスに投与し、死亡を確認したとする北里大学の研究だが、本来、微量のプベルル酸を継続的に摂取した場合の健康への影響と同列に論じることは適当ではない。
 米国国立医学図書館データベース(PubMed)に収載されたプベルル酸に関する論文はわずか6報で、過去に腎毒性を起こしたとの報告もない。人体への影響は不明のままなのだ。

プベルル酸「主犯説」の拙速

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