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経済

トヨタを待ち受ける「賠償」地獄

北米市場の報復が始まった

2010年3月号

「水面下では相当なやりとりが進んでいるはずだが、訴訟の全容はみえない。トヨタとしてはなんとしても和解に持ち込んで早期決着を図るつもりだろう」と全国紙経済部キャップは話す。もし和解が成立すれば、米国での品質不良問題は一連のリコール作業の終了をもって幕が引かれる。が、そう簡単には終わりそうもない。
 トヨタ自動車が米国で賠償地獄の危機に陥っている。昨年八月にカリフォルニア州で発生したレクサスの暴走衝突事故。同乗していた一家四人が全員死亡した事件だが、これがトヨタの賠償地獄の発端であった。それが今では、少なくとも米国の各州において十件を超える集団訴訟(クラス・アクション)やPL(製造物責任)訴訟等が提起されており、現在も、毎日のように新たな訴訟の動きが伝わってくる。二〇一〇年二月十五日には、米高速道路交通安全局(NHTSA)が「トヨタ車の異常加速が原因で起きたと訴えがあった事故による死者が三十四人に増加した」と明らかにした。
 米国は裁判の国である。訴訟ネタになりそうな事故が起こると、いわゆる原告弁護士が現地に赴き、貧しい被害者から委任状を掻き集め多くの訴訟を提起す・・・