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史上最悪のメキシコ「麻薬戦争」

いまや米国の「第三戦線」に

2010年4月号

 メキシコを舞台にした麻薬戦争が大きな危機を迎えた。麻薬カルテルが凶悪化し、テロの手法をエスカレートさせており、米政府はメキシコ政府への支援強化を迫られている。アフガニスタンとイラクを抱えるオバマ政権にとって、メキシコは今や、宣戦布告なき第三戦線になってしまった。
 情勢が新段階に入ったのは、昨年十二月二十二日の真夜中過ぎだ。メキシコ南部タバスコ州で、ある一家が複数のガンマンに襲撃され、四人が惨殺された。ほんの数時間前、この一家の息子はフェリペ・カルデロン大統領によって、「英雄」とたたえられ、メキシコ中に名をとどろかせたばかりだった。息子は海兵隊員で、軍が十二月十六日に、巨大麻薬組織「ベルトラン・レイバ・カルテル」を急襲した際に殉職した。この急襲では、「ボスの中のボス」と恐れられたアルトゥーロ・ベルトランを殺害するという大成果を挙げたため、浮かれたカルデロン大統領は、「報復防止のため、当局者の身元を明かさない」という禁を破り、息子を名指しで絶賛してしまった。
 殺されたのは、海兵隊員の母親、弟、妹と叔母。麻薬カルテルは早速、「俺たちをやるなら、お前たちの家族を・・・