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欧州悩ます「核兵器問題」

「統合軍結成」は夢のまた夢

2010年5月号

 この冬、ギリシャを襲った財政危機はユーロの脆弱性を根底からさらけ出し、いまも余震が続いている。共通通貨を「第一の柱」とする欧州連合(EU)の統合理念は根本的に揺さぶられた。
 一方、統合の「第二の柱」とされた「共通外交・安全保障政策」(CFSP)は、未だ初期段階に留まっている。EUは、「欧州即応部隊」(EUROFOR)と「欧州連合部隊」(EUFOR)という二つの統合軍「のようなもの」を持つ。
 だが、前者はフランスやイタリアなど四カ国が加わっているだけで、国連平和維持活動(PKO)や海賊対策程度の任務しか担当できない小所帯だ。後者に至っては、恒常的な司令部すらなく、自前の作戦展開機能も乏しい。つまりどちらも到底、「欧州統合軍」などと胸を張れる代物ではない。
 当然、冷戦期に、北大西洋条約機構(NATO)という圧倒的存在があり、欧州が自身による防衛など考える余地もなかったという歴史的背景はある。
 だが、冷戦が終結して二十年余り、ユーロという経済的実体性を兼ね備えた欧州連合が運営されながら、CFSPはほとんど進まなかったのには大きな理由があ・・・