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金正日「五月訪中」の真意

全ては「核開発継続」のため

2010年6月号

 北朝鮮の金正日総書記が五月初旬、中国の度重なる招請にやっと応じ、四年四カ月ぶりに訪中した。四泊五日の滞在中、中国は破格の扱いをし、金氏も平壌帰着後、手厚い接待に感謝する電報を送った。しかし、胡錦濤国家主席ら中国側首脳との会談は、そうハッピーとはいえなかった。
 中国筋によると、金氏の訪中は本来、五泊六日の予定で、北京テレビ局大劇場で六日夜に行われた北朝鮮歌舞団初日公演を胡主席らと観賞し、七日朝に帰国の途に就くはずだった。ところが六日午後四時半すぎ、金氏は突如、北京駅に待機中の専用列車に乗り、北京を去った。一部中国要人の見送りが間に合わなかったという。それは会談への不満の表明にほかならない。
 今回の訪中は、韓国の哨戒艦沈没事件(三月二十六日)で、北朝鮮クロ説が濃厚になった時期に行われ、中朝会談に微妙な影を落とした。五月二十日、韓国政府が、北朝鮮の魚雷攻撃によると断定した調査結果を発表、朝鮮半島の緊張が激化した。日米は韓国を支持し、新たな制裁の動きに出ている。金総書記を招き、六カ国協議再開を目論んだ中国の戦略は、すっかり狂ってしまった。

新たな制裁回避が目的

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