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経済

《クローズ・アップ》三村明夫(新日本製鐵会長)

「財界再興」を思い描く

2010年6月号

 日本経団連のスケールダウンが時間の問題とみられる中、財界の関心は経団連の今後よりも「強い財界」の再興に向けた再編論議に向かいつつある。そうなれば再び注目を浴びそうな人物がいる。新日本製鐵会長三村明夫だ。
 三村は昨年五月に経団連副会長を退いて以降、財界では「無役」に等しい。目立った社外活動は中央教育審議会長くらいでその実力、識見から「勿体ない」と惜しむ声が止まないのだ。
 そもそも財界の間で、ポスト・御手洗冨士夫の有力候補の中で不動の人気を誇っていたのは三村だった。少なくとも昨春までは経団連以外の経済団体関係者の間でも三村を有力視する声は多く、御手洗の場当たり的な経団連運営に辟易していた勢力からは待望論さえ出ていた。だが御手洗が「後任は現役副会長から」と発言して以降、三村を推す声は萎んでいった。
 最終的に住友化学会長米倉弘昌にお鉢が回ったのを聞いた三村は「経団連も地に墜ちた」と怒り心頭の様子だったという。会社の格など納得できる点はないに等しい。怒りの矛先は経団連事務局にも向けられた。
 経団連事務局は自らに好ましい会長を据える術に長けている。・・・