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社会・文化

ガルシア=マルケスとカストロ

革命で結ばれた「稀有の友情」

2010年7月号

 話題作『絆と権力―ガルシア=マルケスとカストロ』(A・エステバン、S・パニチェリ共著、野谷文昭訳、新潮社)の刊行によって、二十世紀のラテンアメリカ(以下、ラ米)が生んだ革命家の大立者フィデル・カストロと文豪ガブリエル・ガルシア=マルケス(以下、「ガボ」)の関係、とりわけガボの〈権力好き〉についての議論が日本でも関心を集めている。
 カストロ(一九二六年八月十三日生まれ)とガボ(二七年三月六日生まれ)は、満年齢が五カ月間だけ同じになる。ともに二十一歳の法学生だった一九四八年四月、コロンビアの首都ボゴタで時の最有力大統領候補が暗殺され、首都一帯に「ボゴタソ」と呼ばれる一大騒乱状態が拡がった。何と若きカストロとガボは、その暗殺現場近くに互いに相手の存在を知ることなく居合わせていたのだ。カストロは警察の武器庫から銃を奪って叛乱に参加するが、この体験を基に五三年七月、キューバ・サンティアゴ市で陸軍のモンカダ兵営を襲撃する。兵営を制圧して大量の武器を奪い、革命の狼煙を上げるのが目的だった。襲撃は失敗するが革命の原点となり、カストロは五九年元日、革命に成功する。

カストロと現実を結ぶ懸け橋

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