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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》東海道新幹線

「安全神話」に陰り

2010年7月号

 一九六四年の開業から四十六年が経過した東海道新幹線。JR東海が中央新幹線(リニア)建設に邁進する中で、その「財源」として期待される東海道新幹線は、今後もその役割を果たせるのか。
 世界の鉄道関係者が口を揃えて「高速鉄道は皆、東海道新幹線の息子」と語るほど、東海道新幹線は長年にわたって世界のトップランナーだった。その最大の「売り」は開業以来、列車乗車中の旅客を死亡させる事故を起こしていないという、安全性の高さである。
 しかし、今後も本当に「安全」なのだろうか。実は、ハード、ソフト両面で、その信頼性に疑問が投げかけられている。

「突貫工事」でつくられたインフラ


 新幹線というとつい車両に目がいくが、維持管理がもっとも難しい「ハード」がある。それは、総延長五百十五キロにも及ぶ線路などの長大インフラだ。新幹線のまさに「土台」であるこの部分は開業時のある事情を抱える。
 そもそも、東海道新幹線は、東北新幹線(大宮~盛岡・四百六十五キロ・十一年)の半分の工期、わずか五年半と・・・