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経済

《企業研究》シャープ

対中国戦略で誤算

2010年8月号

 主力の液晶テレビ事業の好調に沸くシャープに、じりじりと終焉の時が迫っている。今年三月に発表されたシャープの決算によると、売上高こそ二兆七千五百六十億円に留まったものの、営業利益は赤字であった昨年度から一千億円以上の増額となった。今期見通しも、売り上げの約六〇%を占める液晶事業に牽引され、売り上げで二ケタ成長の三兆一千億円、営業利益では一千二百億円の増収増益を見込む。数字を見る限り、順調な回復基調との印象が強いが、一方、同社の成長を支えるのはひとえに国内市場であり、昨今のエコポイントなど特殊要因に後押しされた脆弱な成長であることも事実である。
 売上高を約一兆円上乗せした同社のこの十年の成長ぶりは目覚ましくも、その栄光はもはや過去のものとなりつつある。常に資金力が豊富なアジア勢との投資競争、低価格競争にさらされ、いまやすでに韓国、台湾勢はおろか、中国勢の後塵さえも拝す状況だ。
 そこには、「亀山ブランド」なる虚飾の国内生産信仰にしがみついた揚げ句、世界に類を見ない巨大工場(堺工場)の建設に入れ込むも、主戦場の新興国市場で勝ち抜く低価格戦略をおろそかにした経営判・・・