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連載

不運の名選手たち8

三浦 将明(高校野球投手)池田とPLに阻まれた優勝 
中村計

2010年8月号

 時代が変わる「音」がした。
 三浦将明が振り返る。
「バスのラジオの音量を最大にして、練習しながら聴いていた。そうしたら、五─〇でPLが勝ってるって。何で何度も間違えるんだろうと思ってた。逆だろ、って」
 一九八三年八月二十日、時刻は間もなく正午になろうとしていた。間違いではなかった。阪神甲子園球場で行われていた第六十五回全国高校野球選手権の準決勝第一試合は、三回を終えた時点で、PL学園(大阪)が優勝候補の大本命、池田(徳島)をすでに五点もリードしていたのだ。
 そのとき三浦ら横浜商のメンバーは準決勝第二試合に備え、甲子園から車で五分ほどの距離にある球場で軽く汗を流していた。
 高校球界に一大革命を巻き起こしたチーム。それが池田だった。
 それまでの高校球界は、広島商に代表されるように少ない得点を堅実な守備で守り抜くというスタイルが主流だった。ところが、四国の山あいにある小さな町の公立校は「やまびこ打線」と呼ばれた豪打でそんな常識を一気に覆した。
 一九八二年夏、池田はエースで四番の畠山準(元横浜)を擁し初めて全国・・・