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WORLD

「復調」著しいASEAN経済

中印に迫る「アジア第三極」に

2010年9月号

 中国、インドの高成長の陰に隠れていた東南アジア諸国連合(ASEAN)が今、アジアの第三の高成長地域として復権しつつある。原動力となっているのは、北の中国と西のインドという世界の成長エンジンを両にらみできる地政学的位置の優位性だ。そこに一九九〇年代から活発に展開してきた自由貿易協定(FTA)の効果が加わっている。域内人口も六億人に達しており、個人消費など内需がここにきて勢いよく拡大し始めた。中国経済が人民元高、人件費高騰などで変調の兆しをみせるなかで、日本企業はASEANへの取り組みを再構築すべき時に来ている。
 アジア開発銀行(ADB)が七月に発表した「アジア太平洋地域の経済成長見通し」は世界のエコノミストや市場関係者を驚かせた。今年のASEAN全体の成長率予測が六・七%に引き上げられたからだ。この上方修正にはふたつの意味がある。第一に、前回の四月時点の予測よりも一気に一・六ポイントも引き上げられたという短期的な景気急回復。中国、インドの成長率が横ばいのままだったのと対照的だ。第二に、中国の九・六%、インドの八・二%に絶対水準で迫ってきたことだ。世界でみれば、六・七%・・・