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社会・文化

「就職氷河期」はマユツバ

過去より悪い数字などどこにもない

2010年9月号

 新卒者の雇用状況の悪化に、いよいよ政府まで動いた。菅直人首相は八月二十四日、新たに設置した新卒者雇用・特命チームの第一回会合で「試験雇用の助成拡充」などの支援策を打ち出すなど、かなりの熱の入れようだ。
 大学生の就職に関しては「百社も受験したが、結局内定はもらえなかった」などという記事を目にすることは多い。多くの記事は昨年に続いて今年も「就職氷河期」だと書きたてるが、果たしてそれは本当なのだろうか。
 五月二十一日の各紙夕刊には「就職氷河期に逆戻り」「大学就職率ワースト2」との見出しが躍った。文部科学省と厚生労働省が共同で「二〇一〇年三月に大学を卒業した者の就職率は前年比マイナス三・九ポイントの九一・八%だった」と発表したのだ。二年連続の悪化であり、「就職氷河期」と呼ばれた一九九九年の九一・一%に次ぐ史上二番目の低さだった。しかも、各紙は一一年三月卒業予定者の就職も厳しくなると書きたてたため、学生や父兄そして大学の就職担当者の動揺は大きかった。
 たしかに、この数字だけを見ると非常に厳しい状況だが、新聞報道を鵜呑みにしてはならない。この調査は、わず・・・