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連載

新・不養生のすすめ2

医療麻薬は悪ではない
大西睦子

2017年5月号

 読者から、悲痛な声が届いた。
「わたしは慢性疼痛で医療用麻薬を二年程飲んでいました。一般に言われる悪い副作用は殆ど出ず、それにより痛みは改善していましたが、医者の話によると審査が厳しくなって突然処方が打ち切られました。何とか他の小さな病院や緩和ケアのところを探して薬を出してもらっていたのですが、そこでも“がんの患者にしか出せない”と遂に貰えなくなりました。役所も病院も保険団体も、どこで治療を続けられるか、教えてくれません。薬を貰えず、また医者が適切な説明をしてくれず、行き場を失い苦しんでいる患者が沢山いることを知ってください」
 海外から見ると、この状況はとても理解しがたい。日本では、世界に誇る国民皆保険制度の下で、必要な医療が平等に受けられるはずだ。それに日本の医薬品市場は、米国に続き世界第二位である。高齢化社会に伴い、慢性疾患やがん患者の増加のため、医療用麻薬の消費量が多くても、全く不思議ではない。
 ところが実際、日本の医療用麻薬の消費量は極端に少ない。
 世界保健機関(WHO)の協力センターである、米国ウィスコン・・・