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連載

日本の科学アラカルト2

無限の可能性持つ「有機化学」の世界

2010年10月号

 化学の分野における日本の活躍は目覚ましい。事実、ノーベル賞受賞者を見ても、二〇〇〇年以降の日本人受賞者八人のうち半数が化学賞だ。なかでも、野依良治博士(〇一年受賞)や下村脩博士(同〇八年)がその功績を評価された「有機化学」において、日本人の研究は高く評価されている。
 乱暴な言い方をすれば「炭素(C)の化合物」を扱う有機化学は他分野への広がりを持つ。所謂無機化合物と違い、炭素を中心とする原子の無数の組み合わせが考えられる。これは、炭素が―C―C―や、―C―O―といったつながりを共有結合により何度も繰り返すことができる元素だからだ。つまり、文字通り無限の可能性を秘める領域ということができる。
 身の回りにも有機化合物は溢れている。石油などの化石燃料や、化学繊維やペットボトル、さまざまな医薬品が代表例だろう。
 有機化学とは、どのような「反応」により、どのような「化合物」が合成されるかを探求し、その化合物がどのような振る舞いを見せるかを探る学問だ。前述した炭素や他の物質との繋がりは主に「共有結合」で行われる。これは原子の外殻にある電子(価電子)によるものだ。・・・

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