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経済

繊維VS鉄鋼の「最先端素材戦争」

世界でダントツの「技術力」対決

2010年11月号

 年内にも全日本空輸に引き渡される予定のボーイング社の最新鋭中型旅客機「787」。燃費が従来の同型機に比べ二〇%以上も向上した省エネ、環境対応のハイテク機だ。その秘密は東レが供給する炭素繊維複合材にある。一九九〇年代末以降、旅客機メーカー各社は炭素繊維複合材を採用しているが、これまでは多くても機体重量の一〇%程度に過ぎなかった。「787」では胴体や主翼という航空機の根幹部分を従来のアルミ合金から炭素繊維複合材に置き換えた。比率は機体重量の五〇%以上となり、一機で三十五トンもの炭素繊維複合材を使う。
 今年六月末、帝人の子会社で、炭素繊維複合材を手がける東邦テナックスは欧州のエアバスと炭素繊維複合材の供給契約を結んだことを発表した。エアバスの最新鋭中型旅客機「A350XWB」の胴体にまず採用する。来年から二〇二〇年までの長期契約で、就航したばかりの大型旅客機「A380」への採用も視野に入れている。帝人は小型旅客機で世界トップを競うカナダのボンバルディアとも炭素繊維複合材の供給契約を結んでおり、次世代小型機の「Cシリーズ」で大量に使用される見通しだ。
 衣料向けの・・・