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経済

《クローズ・アップ》大八木成男(帝人社長)

「ノーベル賞」の波に乗れるか

2010年11月号

「創業以来の快挙。化学を追究する文化の成果だ」。帝人の大八木成男社長は、帝人出身の根岸英一氏のノーベル化学賞にこう喜びを表した。根岸氏は帝人が愛媛県松山市に工場を新設し、国内でポリエステル繊維「テトロン」の本格生産に乗り出した一九五八年に帝人に入社、約八年間勤務した。その間、フルブライト奨学生として米国の大学に三年間留学し、博士号を取得。その後、同社の中央研究所で研究開発にあたった。受賞理由の「クロスカップリング」は退社後の実績だが、その技術自体は帝人はもちろん液晶生産などで多くの日本企業に活用されており、日本の産業界の競争力を高めるのに大きく貢献している。根岸氏のノーベル賞受賞は帝人という企業の研究開発に対する姿勢を象徴していよう。
 帝人が今、リーマンショック後の業績落ち込みから反転攻勢に出ようとしている。二〇〇九年三月期、一〇年三月期は大半の部門で需要が世界的に急減、売り上げは〇八年三月期の一兆三百六十六億円から一〇年三月期には七千六百五十八億円と二年間で二六%も減少、二期連続の最終赤字となった。ライバルの東レも同時期に二期連続最終赤字に転落しており、帝人の経営だけに問・・・