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社会・文化

文科省とJOCが醜い「縄張り争い」

「選手不在」のままに

2010年11月号

「スポーツ利権」を巡って、文部科学省と日本オリンピック委員会(JOC)が醜い縄張り争いを繰り広げている。
 今年八月二十六日、文科省は今後十年間の国のスポーツ政策の指針となる「スポーツ立国戦略」を発表した。内容をみると、五輪で過去最高のメダル獲得(夏季三十七、冬季十以上)を目標に掲げ、スポーツ振興策として引退後のトップアスリートが地域の総合型クラブ(全国で三百拠点を計画)で指導するなど、高い理想を掲げた内容となっている。
 ところが、その一カ月前、この「戦略」の原案が発表された際、JOCがクレームをつけた。「日本体育協会(体協)とJOCが選手強化とスポーツ振興を主導する従来の体制を維持すべきだ」。
 文科省は、外郭団体である日本スポーツ振興センター(NAASH)を核として、同センターが持つ国立スポーツ科学センター(JISS)を選手の育成や強化の中心に据えようとしている。ある体協関係者は語る。
「JOCは最も旨みのある選手強化事業を取り上げられ、五輪への選手派遣と普及活動をするだけの組織になってしまうという危機感があるのです」

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