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連載

日本の科学アラカルト3

我が国のエネルギー事情を救う「原子力工学」の将来

2010年11月号

 一口で「原子力工学」と言っても、その研究分野は多岐にわたる。すぐに考えつくのは、「発電炉」の設計や利用に関する、炉物理、構造工学、熱流体工学などだろう。さらには、放射線を利用する、放射線医療やビーム工学、レーザー工学などもこの分野に含まれる。
 そして近年では、次世代炉開発のほかに、既存原子力発電炉の高経年化対策や、核拡散・核テロへの対策など、旧来型の技術・工学だけでなく、社会的な側面に関する分野にも拡大されている。
 少資源国ゆえに自国での発電がメインになるが、最近は原子力発電所の「輸出」が注目されているのはご存じの通り。国の政策や、原子炉メーカーの取り組みに左右されることも多いが、これに資するような「学際的」研究もおこなわれている。
 東京大学の田中知教授や久野祐輔客員教授(日本原子力研究開発機構)などのグループは、国際核燃料サイクルについての新しい構想に取り組んでいる。これまでに検討されてきた核燃料の「供給保障」に加えて、使用済み燃料の管理を含む、核燃料サイクル全体を視野に入れたものだ。ウラン濃縮技術だけでなく、使用済み燃料に含まれる核物質の拡散防・・・