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イエメンに根を張るアルカーイダ

パキスタン北部に次ぐ「第二の温床」に

2010年12月号

 気温は摂氏五十度を超え、雨は一滴も降らない。アラビア半島はほぼ全域がそのような灼熱と乾燥の砂漠だが、その南端のイエメンだけは山々が緑に包まれ、天まで届く段々畑では豊かな農作物が実る。
 古代ローマ人に「幸福のアラビア」と呼ばせしめたこの楽園は、三千メートル級の山々にインド洋からモンスーン(季節風)が吹きつけることによって生まれた。その特異な気候は乳香や没薬の木を育み、その木から採取されたこの香料は同じ重さの金と交換されたという。
 乳香や没薬は今も採れるが、イエメンは最貧国(LLDC)に没落、アフガニスタンなどと肩を並べる世界のお荷物国家となった。一方食うや食わずだった砂漠の民は、石油のおかげで一転、世界一の金満国家群を建設した。
 砂漠の大富豪、ビンラディンは故国を追われ、スーダンやアフガニスタンという破綻国家にその庇護者を求めた。そして今、イエメンに潜伏しているのではないかとの観測もある。テロリストが好むこれら破綻国家に共通している要素は、中央政府の支配が地方に及んでおらず、地方の物事は部族長によって決められている、ということだ。ただ、イエメンが他の・・・