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連載

あるコスモポリタンの憂国 連載47

シリコンバレー的野性との対比の中で
清華大学招聘教授 紺野 大介

2010年12月号

 本年夏、米国シリコンバレーで会議終了後、久し振りのゴルフを米国の若い数学者と愉しんだ。
 シリコンバレーにも以前足繁く通った時期がある。周知の通り、ここは既存企業が手を出せないような、新規性が強くリスクの高いハイテク産業のベンチャーが続々と誕生する世界でも特殊なエキサイティング・エリア。スタートアップの運営に必要な資金を、銀行からの融資でなくベンチャーキャピタル(VC)からの投資で調達する。VCは投資後三~五年で五~十倍のリターンを期待するので、経営陣は事業発展の短期的ゴールを店頭市場での株式公開に設定する。ベンチャーは最速の研究開発を進め、起業の成長力をテコにした企業価値の拡大が最優先され、こうしたビジョンを会社全体で共有する手段としてストックオプション制度(未公開の自社株を初期の段階で保有する権利)が生まれた。
 スタートアップの創業者は無論、従業員、起業に協力する弁護士、会計士、アドバイザーなども報酬の一部をストックオプションの形で受取ることでリスクを共有し、事業開花の可能性に賭けるのだ。そしてひとたび株式公開に成功すれば手持ち株は百倍位に変化し、多大な価値・・・