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連載

不運の名選手たち12

土井宏昭(ハンマー投げ)聳ゆる巨人「室伏」を見上げる日々 
中村計

2010年12月号

 そのひと言が、すべてを物語っていた。
「一度ぐらい勝ってみろとか言われるけど、だったらオマエ、総理大臣になってみろよ、って言いたい。それと同じことですよ」
 中華系ファミリーレストランの四人がけのテーブルの上は、皿で埋め尽くされていた。中華セット(ラーメン、餃子、炒飯)に加え、餃子二人前、唐揚げ二人前、五目焼きそば、さらに単品のおかず二品。土井宏昭は、身長一八〇センチ、体重一三〇キロの体にコーラでそれらを流し込みつつ、これまでの競技人生を振り返った。
 九年連続二位―。日本選手権における土井のハンマー投げの成績である。土井の上には十六年間、日本の王座に君臨し続けている巨人がいる。アテネ五輪の金メダリストで、八四メートル八六の日本記録を持つ室伏広治だ。
「前代未聞もいいところ。十六連覇なんて、ありえないでしょう」
 技術を追求すればするほど、金メダリスト超えの「不可能」の文字は深く、濃くなるばかりだった。
 土井の指極(両腕を横に伸ばしたときの長さ)は、約一メートル九二センチ。広治はそれよりも約三センチ長い。一センチ違えば距離・・・