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連載

日本の科学アラカルト4

量子技術を応用した次世代「暗号通信」システム

2010年12月号

 古代の狼煙に始まり、文字が生まれ手紙という手段が加わった。近代になり、そこに電信や無線といった技術が生まれ、現在ではインターネットが「通信」の主流となっている。
「通信」と切り離せないのが、「暗号」である。「通信」の歴史自体が「暗号」の歴史であった。古くはアルファベット換字式から、第二次世界大戦中にはドイツ軍の暗号機「エニグマ」が、連合軍を苦しめたのはよく知られている。
 そして、人類が手にしたありとあらゆる「暗号」は常に「解読」されてきたのも歴史的事実だ。現在、インターネットを中心とする通信に用いられているRSA方式の「公開鍵暗号方式」は、素数が持つ特性に依存している。
 数学発祥の頃から慣れ親しんだこの素数には現在に至っても、その簡単な計算方法は見つかっておらず、地道に計算していく以外に方法がない。このことにより、巨大な素数を暗号に用いるRSA方式を破るためには、いくら高速のコンピュータを用いても、何百年もかかる。このことが「安全性」を担保しており、現在の主流となっている。
 一方で、新しい秘密通信についての研究は今も続いている。それは、現・・・