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連載

西風 356

関西・伊丹統合運営で離陸か
八木亜夫

2011年1月号

 


 関西空港と大阪(伊丹)空港の経営統合について、国土交通省は、従来の「持ち株会社」案から一転して、国が出資する「新運営会社」方式を地元に提示した。持ち株会社方式では、伊丹空港の利益の半分が税金で消えてしまうための苦肉の策。
 民営の関空会社は一兆三千億円の有利子負債が重荷になって、動きがとれない。一方、国営の伊丹空港には年四十億円以上の利益がある。新統合案は、関西空港を上下分離して二つの会社に分けるもの。一つは関西空港の土地と負債の大半を保有する「関空土地保有会社」。もう一つは二〇一二年四月をメドに設立する「統合事業運営会社」で、国が一〇〇パーセント出資し、関西空港と伊丹空港を統合して運営する。関西空港の負債のうち四千億円をこの会社に移し、さらにこの会社の利益を関西空港の負債返済に充てる。その上で、将来は運営権を民間に売却する。
 そうなると、地元自治体や財界が出資してできた関西空港会社の本体は、ただの土地管理会社になってしまう。空港の運営は、伊丹空港と統合されて国まかせ。民営空港という関西空港本来の姿が失われてしまいか・・・