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連載

日本の科学アラカルト5

無尽蔵の資源を利用するバイオ系ナノファイバー

2011年1月号

「バイオマス利用」というと、サトウキビやトウモロコシを原料とするアルコール(エタノール)に代表されるエネルギーを思い浮かべる人が多いだろう。
 しかし本来は生態学においてある特定の空間における、「バイオ(Bio)」つまり生物の量を、物質やエネルギーの量(Mass)で表現したものだ。これが語源となり、生物由来の産業資源をバイオマスと呼ぶようになった。それこそ人類は古代から、「薪」という形でバイオマス・エネルギーを利用している。冒頭で述べたのは、植物由来の炭水化物を、内燃機関で利用できる燃料に転換するバイオマス利用のことだ。サトウキビやトウモロコシの場合、炭水化物が「糖」や「でんぷん」の形で貯蔵されており、燃料であるエタノールに変えやすい。
 しかし、地上でもっとも大量に存在する炭水化物は「セルロース(C6H10O5)n」だ。これは主に植物細胞の細胞壁の構成物質であり、ありとあらゆるところに存在する。当然、これを利用したバイオエタノール燃料の研究も行われている。しかし、現状ではコスト高で、一時のブームから比べると下火となっている。
 一方で違った形での利用、セ・・・