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WORLD

米国社会を分断する深い「亀裂」

アリゾナ銃乱射事件で露顕した病巣

2011年2月号

 アメリカはどこに行くのだろうか。一月八日、アリゾナ州ツーソンで起きた銃乱射事件はそんな思いを抱かせた。乱射事件を生み出す銃の規制の是非を超えて保守・リベラルの双方が相手をののしり合うアメリカの深い分断を浮かび上がらせているのだ。背景には建国以来の国是をめぐる戦いのさなかにいるアメリカが浮かんでくる。オバマ大統領の再選の行方もこの戦いの帰趨次第なのだろう。
 乱射事件は左右の政治勢力やメディアにののしり合いの格好の材料を与えた。犯人に頭を撃たれたギフォーズ下院議員の選挙区の地図に昨秋の中間選挙で銃の照準マークをつけ、「弾を込め直せ」と落選工作を促した前アラスカ州知事のサラ・ペイリンが、まずリベラルの標的となった。人気ブロガーのマーコス・ズニガは「ペイリンよ、任務完遂というわけか」と発言、乱射事件の犯人はペイリンが放った刺客と決めつけた。左右のブロガーがこれを合図に次々とののしり合いに参入した。

存在感失った中道派


 あまり知られていないが、リベラルもギフォーズを嫌っている。ズニガは自分・・・