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連載

日本の科学アラカルト6

世界でも注目される省エネルギー「窒素固定法」

2011年2月号

 アンモニアは、産業的にきわめて重要な物質の一つだ。窒素一つと水素三つからなるこの物質(NH3)は、直接吸引すれば気絶さえする鼻を突く強烈な臭いでよく知られている。人間の尿等の中にも含まれるが、濃度〇・一%以上のアンモニアガスを吸引すると、危険状態に陥り、「毒物及び劇物取締法」で劇物に指定されている物質でもある。
 このアンモニアの重要性は一義的に肥料用によるものだ。アルカリ性を示すアンモニアと、酸を反応させて得られるアンモニウム塩(たとえば硫酸アンモニウムなど)は、農作物用の化学肥料として世界中で広く使用されている。
 肥料の三大要素の一つとして知られる窒素(あと二つはリンとカリウム)は、大気中に八割も含まれ、地球上に大量に存在するものの、多くの植物は直接それを取り込むことができない。また、核酸、アミノ酸、たんぱく質にも含まれ、動物の生命維持にも必要不可欠な物質だ。もちろん動物も大気中の窒素を摂取することができず、植物か他の動物を捕食することで身体に取り入れる。
 自然界において、大気中に存在する不活性(反応しづらい)な窒素分子(N2)を、植物に取り込む・・・